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ゆきのやどり
雪の宿り
神西 清
「文藝」河出書房、1946(昭和21)年3、4月合併号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 25,995 字 · 51 页
など記してあったと申します。前のお二人はわたくしの思い違えでなくば、これより先に亡くなっておられますが、観世殿が一昨年、金春殿が昨年と続いて身罷られましたのも不思議でございます。それにしましても世の乱れにとって、歌よみ、連歌師、猿楽師など申すものに何の罪科がございましょう。思えばひょんな風狂人もあったものでございます。
わたくし風情が今更めいて天下の御政道をかれこれ申す筋ではございません。それは心得ておりますが、何としてもこの近年の御公儀のなされ方は、わたくし共の目に余ることのみでございました。天狗星の流れます年の春には花頂若王子のお花御覧、この時の御前相伴衆の箸は黄金をもって展べ、御供衆のは沈香を削って同じく黄金の鍔口をかけたものと申します。その前の年は観世の河原猿楽御覧、更には、これは貴方さまよく御存じの公方さま春日社御参詣、また文正の初めには花の御幸。……いやいやそんな段ではございません、その公方さま花の御所の御造営には甍に珠玉を飾り金銀をちりばめ、その費え六十万緡と申し伝えておりますし、また義政公御母君御台所の住まいなされる高倉の御所の腰障子は、一間の値い二万銭とやら申します。