轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
ゆきのやどり
雪の宿り
神西 清
「文藝」河出書房、1946(昭和21)年3、4月合併号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 25,995 字 · 51 页
今宵をのがして又いつ再会が期し得られよう。……そんな気構えがありありと玄浴主の眼の色に読みとられる。
それにもう一つ、貞阿にとって全くの闇中の飛礫であったのは、去年の夏この土地の法華寺に尼公として入られた鶴姫のことが、いたく主人の好奇心を惹いているらしいことであった。世の取沙汰ほどに早いものはない。貞阿もこの冬はじめて奈良に暫く腰を落着けて、鶴姫の噂が色々とあらぬ尾鰭をつけて人の口の端に上っているのに一驚を喫したが、工合の悪いことには今夜の話相手は、自分が一条家に仕えるようになったのは、そもそも母親が鶴姫誕生の折り乳母に上って以来のことであるぐらいの経歴なら、とうの昔に知り抜いている。……
主人の口占から、あらまし以上のような推察がついた今となっては、客も無下に情を強くしている訳にも行かない。実際このような慌しい乱世に、しかも諸国を渉り歩かねばならぬ連歌師の身であってみれば、今宵の話が明日は遺言とならぬものでもあるまい。それに自分としても、語り伝えて置きたい人の上のないこともない。……そう肚を据えると、銅提が新たに榾火から取下ろされて、赤膚焼の大湯呑にとろりとした液体が満たされたのを片手に扣えて、折からどうと杉戸をゆるがせた吹雪の音を虚空に聴き澄ましながら、客はおもむろに次のような物語の口を切った。