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ゆきのひ
雪の日
近松 秋江
「趣味」1910(明治43)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,365 字 · 17 页
――私より兄さんの嫁は遅く来て私が戻ってくる時分には、以前は商売人であったとかいって病身でひどく瘻れていたが顔立ちはいい女だから、病気も直ったとみえて、私の知っている時分より若くなって綺麗になっているの。お召かなんかのいい着物を着て、私の連合の方はやっぱし結城かなんか渋いものを着ていました。そうして二人連れだって行くんでしょう。――牛込の奥に菩提寺があるんですから、きっとお寺詣りにでも行ったんでしょうが、変なものですねえ。そうして二人並んで歩いて行くのを見ると、もう、縁もゆかりもないんだが、ああして二人でいっしょに歩いたりなんかするようではどうかなっているのじゃないかと思われてそれが何だか腹が立つような、こう憎いような気がしましたよ」
別れて戻る時だって、『私は牛込には先祖の寺があるから時々寺詣りには行く。そのほかどこで出会わぬとも言わぬ。会ったら悪い顔をしないで、普通に挨拶くらいは互にしよう。けれどお前が今度持つ夫といっしょであったら、会ってもその人に気の毒だから見ても見ぬ振りをしておろう。私の方でもしこんどいつか持つ家内といっしょであっても、そのつもりでいてくれ』