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ゆきのひ

雪の日

近松 秋江

「趣味」1910(明治43)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,365 字 · 17 页

青空文庫

この焼け爛れた感情は、微かに指先を触れただけでも飛び上るように痛ましい。

で、私は前もって言ったようにただ「フム、そんなことがあったのか」と言った。

こう言って、私は、その自分の言葉をふと想ってみた。私は、女が、淡い、無邪気な恋をしたこともあったかと思ったが、私は、それを嫉ましいとは想えなかった。

私は、女といっしょになってから今では何でもない先の夫との仲をひどく嫉んだ。現在不義せられているもののごとく嫉んだ。私はそれがために嫉妬の焔に全身を燃した。それがために絶えず喧嘩をした、そうして喧嘩をしながらも熱く愛していた。愛しながら喧嘩をした、反感と熱愛と互に相表裏して長くつづいた。その時分、女はしばしばこういうことを言った。「あなたくらいおかしな人はない。自分で出戻りだってかまわない、と言っていっしょになっていながら、いっしょになれば、出戻りは厭だというんですもの。これが仲に立つ人でもあっていっしょになったのならば話の持って行き場もあるが、二人で勝手にいっしょになっていて、あなたにそんなことを言われて、私は――立つ瀬がない」

私はこの道理にむりはないと思った。