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ゆきのひ

雪の日

近松 秋江

「趣味」1910(明治43)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,365 字 · 17 页

青空文庫

そう思ったけれどもいっしょになる前には邪魔にならなかった先の夫の幻影が、今は盛に私をして嫉妬の焔に悶えしめたのであった。

「フム、そんなことがあったか」

と言う私の言葉は、どうしてももう、たいした感興から発せられたものとは思えなかった。そうして私は女に向ってこう言った。

「お前とはよく喧嘩をしたり、嫉妬を焼いたりしたもんだなア。あれっきりだんだんあんなことはなくなったねえ」

「ええ、あのころは、あなたが先の連合と私との事についてよくいろんなことをほじって聞いた、前の事を気味悪がり悪がり聞いた」

「ウム。いろんなことを執固く聞いては、それを焼き焼きしたねえ。それでもあの年三月家を持って、半歳ばかりそうであった、が秋になって、蒲生さんの借家に行った時分から止んだねえ」

「ええ、あの時分はあなたがもうどうせ、私とは分れるものと思って、前のことなんぞはどうでもいいと諦めてしまったから」

「だって、またこうしていっしょになっているじゃないか」

「………」女は不思議のように、またこの先きどうなるのであろう? と思っているもののようにしばらく黙っていた。

すると、そんなことは考えていたくないというように、