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ゆき
雪
楠田 匡介
「探偵新聞」1948(昭和23)年5月5日号、5月15日号、5月25日号、6月5日号、6月15日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 24,792 字 · 50 页
夜中に君は目を覚した、まだ一人書庫に早川は起きている。何気なく入って来て一撃する。それから出て――そしてどうして君はこの鍵をかけたんだい?」
伊東はびっくりしたように、体をふるわしたが、みるみる恐怖がその顔一ぱいにみなぎって膝においた手がはたはたとなる程ふるえていた。口は半ば開いて目はかっとみ開いて空間の一点をみつめていたが、やがてゆっくり、それは丁度助けを求めるもののように順々に人の顔をみ廻した。
「――それにね伊東! 君の書いた三千円の……早川さんにやった借用証がなくなっているんだよ」
「…………」
「金の外は……もし期日までに返せない時は君は何か相当なものを引換えにする条件だったね……その証書はどうした?」
「焼きました」
といった彼の語調には何かしら観念したもののひびきがあった。
「そうだろうな」
警部はそういって煙草の一本をつまみ出した。彼もふてぶてしい態度で肩を張りながら自分もポケットから煙草を出してパイプにつめ火をつけた。じっと煙の中からそれをみていた警部は、いまいましそうに顔をゆがめると、
「君にも嫌疑がかかっている。暫くは外出は禁じますからね。