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くものわくころ

雲のわくころ

小川 未明

「小学六年生 5巻6号」1952(昭和27)年9月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 5,198 字 · 11 页

青空文庫

すずしい風が、ひたひたと、たえず流れの上を吹いていたのに、どこからか、においをかぎつけて飛んできたものか、一ぴきのはえが、そばの石にとまって、食べ物のありかをさがしていました。

また、他のほうからは、まったく見なれない黒色のくもが、おそらく、このあたりにすむのであろうが、どうして、水をわたったものか、冒険をおかして、やはり食べ物をねらっているのでした。勇吉は、虫たちの敏感なのにおどろき、かつ、その真剣なのを、きみ悪くさえ感じました。これを気づかずにいた、おじさんに告げると、

「はあ、めったに、こんなところで、ごちそうのにおいなんか、あることがないから、そりゃ、虫どもは、さがすのに、血まなこだろうよ。虫だって、人間と同じことで、生きることにかわりがないし、容易でないのだ。」と、おじさんは、はしをうごかしながらいいました。

そう聞くと、かれは、このとき、くもや、はえを、追いはらいはしたけれど、たたきつけて、殺す気には、なれなかったのです。

それから、しばらく、勇吉は一人で、石から石へわたったり、また水ぎわを、あちらへいったり、こちらを散歩したりしました。