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うんなんしゅびへい

雲南守備兵

木村 荘十

「新青年」1941(昭和16)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 37,859 字 · 76 页

青空文庫

横町がないというより、あの埃々した饐えたような匂いのする街全体がないのである。

そこには、安っぽいバラック建のような二階建が並んでいて、その背後に入って見ると、同じような家々が隙間もなく建ち、その一角の広い板囲いの中に、工場のようなものが建ちかかっていた。

孫伍長は、暫く呆然として立っていたが、角の薬屋まで引返して来ると、

「一体この裏の街はどうなっちゃったんだね」

と、店先から詰問するように入って行った。

売台に倚りかかって大きな算盤をはじいていた店員は、戦線を感じさせる孫の姿に、怯えた眼をして主人を振返った。

「この裏の黄泥巷さ、随分変っちまったが……」

「ああ、この貧民窟ですか。命令ですっかり取払いになりましてね。大分騒ぎましたけど官署のやることをどうにもなりはしませんや。気の毒なもんでしたよ。その日から寝る所もないのですからな」

「それで、あれだけの人間が何処へ行ったんだろう」

「さア、不断だって、何処へどう行っちゃうか分らない人達ですからね、軍夫にとられたり、鉱山へ送られたり……」

「だがまさか女子供までそんなことはしないだろう」

孫伍長の顔色がなかった。