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かみなり

雷

海野 十三

「サンデー毎日 秋期特大号」毎日新聞社、1936(昭和11)年9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,706 字 · 40 页

青空文庫

5

それから二日後のことだった。

その日は、稀に見る蒸し暑い日だったが、午後四時ごろとなって、比野町はその夏で一番物凄い大雷雨の襲うところとなった。それは御坂山脈のあたりから発生した上昇気流が、折からの高温に育まれた水蒸気を伴って奔騰し、やがて入道雲の多量の水分を持ち切れなくなったときに俄かにドッと崩れはじめると見るや、物凄い電光を発して、山脈の屋根づたいに次第次第に東の方へ押し流れていったものだった。

ゴロゴロピシャン! と鳴るうちはまだよかった。やがて雷雲が全町を暗黒の裡に、ピッタリと閉じ籠めてしまうと、ピチピチピチドーン、ガラガラという奇異な音響に代り、呼吸もつがせぬ頻度をもって、落雷があとからあとへと続いた。

その最中、町では大騒ぎが起った。

「おう、火事だ。ひどい火勢だッ」

「これはたいへんだぞ。勢町の方らしいが、あの真黒な煙はどうだ。これは油に火が入ったな」

篠つく雨の中を、消防組の連中が刺子を頭からスポリと被ってバラバラと駈けだしてゆくのが、真青な電光のうちにアリアリと見えた。手押喞筒の車が、いまにも路の真中に引くりかえりそうに激しく動揺しながら、勢いよく通ってゆく。