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かみなり

雷

海野 十三

「サンデー毎日 秋期特大号」毎日新聞社、1936(昭和11)年9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,706 字 · 40 页

青空文庫

兄弟は、夢とばかりに抱きあって、悦びにあふれてくる泪を、せきとめかねた。

それにしても、なぜ北鳴四郎は雷撃にあって死んだのだろう。

それには恐ろしい因縁ばなしがあった。彼は、その攀じのぼっていた高櫓の避雷針が、完全に避雷の役目を果たして呉れることと思い違いをしていたのだった。もちろんその櫓を建てたときには、避雷装置は十分完全なものだった。しかしあの豪雨の前日になって、その二基の避雷装置は急に不完全なものと成り下ったのだった。それは何故だったろう?

それは化助の仕業に外ならなかった。しかしそれをそうさせたのは、この櫓を組んだ松屋松吉だった。彼は神経性になってイライラしているとき、頻々と化助の金ねだりに逢って、遂に思いあまった末、あの櫓の避雷針と大地とを繋ぐ長い撚り銅線を外せば、百円近い金になることを教えたのだった。それを聞いた化助は躍り上って悦び、四郎の居ない間に、樋の中に隠れている部分の銅線をすっかり盗み去ったのである。だからあの大雷雨のとき、四郎の頭上に聳えていた針は、完全なる避雷針ではなかったというわけである。――雷が、高さが百尺もあるお誂え向きのこの二基の櫓に落ちたことは極めて合理的だった。