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でんきかんばんのしんけい
電気看板の神経
海野 十三
「新青年」博文館、1930(昭和5)年4月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,480 字 · 29 页
て彼女の代りに店の窓をあけたりしていると三十分も経ってから、この三階建てのビルディングが崩れるような音をたてて、四人の生残り女給が悲鳴と共に駈け下りて来た。その恰好は話にも絵にもならない。滑稽と悲惨とが隣り合わせに棲んでいたことにはじめて気がつくような異常な光景だった。その四人の女給は鈴江、ふみ子、お千代、とし子でみんな古くから居る連中ばかりである。
三階へ行ってみると、表の窓際に床をとって寝ていた春江が、仰向けに白い胸を高く聳かして死んでいた。その左の乳下には一本の短刀が垂直に突っ立ち天の逆鉾のような形に見えた。どす黒い血潮が胸半分に拡がりそれから腋の下へと流れ落ちているらしかった。右の乳房はどうしたものか、彼女の右の手で堅く握りしめていた。しかし全体の姿勢から言って、彼女は即死を遂げたものの如く、蒲団の中に行儀よく横たわっていた。彼女の死後、犯人は蒲団を頭の上からスポリと被せて行ったので、一層発見がおくれたものらしい。だからその朝一度その室を訪れた圭さんも気がつかなかったものと考えられる。
警視庁の活動は、はじまった。死体は即刻大学へ廻され、剖検された。