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でんきぶろのかいしじけん
電気風呂の怪死事件
海野 十三
「新青年」博文館、1928(昭和3)年4月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,788 字 · 34 页
由蔵の屍体は、女湯の惨殺体と同様に、咽喉笛の処に鋭い吹矢が立っていた。そして、四辺一面の血の海は、次々と発見された事件の衝動に麻痺された一同の心に、只燃えつつある絨鍛の如くに映った。
しかし、次に、一同は異様なものの落ちていることを発見した。それは筒状の望遠鏡と、もう一つは脚のない活動写真撮影機であった。更に、犯人が兇行に使用したに違いない吹矢や、吹矢の筒も片隅の方に発見された。パンの食いかけ、蜜柑の皮、それらも決して忽かには出来ぬ発見物と見做された。
赤羽主任は懐中電灯を藉りて、由蔵の屍体の周囲を丹念に調べてみたのち、ちょっと首を傾げて云った。
「おい、誰かちょっと手を借して呉れないか。この屍体の頸を左へ、四五寸ばかし動かしてみるんだ」
心得顔に一人が屍体の頭髪を掴んでズルズルと左へ曳き寄せた。と、赤羽主任は、吹矢の一本を取上げて、その尖端で由蔵の頭のあった辺を探っていたが、暫くすると、コツンと音がして、ポカリと眼の前に一つの穴が開いた。
「これだな!」
赤羽主任は、その丸い穴から下を覗いてみた。果せるかな、眼眩いを感ずる程遥かの真下に、先刻まで取調べていた女の屍体が横っている。