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でんきぶろのかいしじけん
電気風呂の怪死事件
海野 十三
「新青年」博文館、1928(昭和3)年4月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,788 字 · 34 页
――と、これが、赤羽主任が匆々にまとめ上げた推理の筋道であった。
赤羽主任は考える。――それから由蔵は、何かの異常に気がついて、此の天井裏に上ってみたが、逸早くそれと知った犯人のために、物蔭から吹矢で射殺されたに違いがない。それが証拠に、由蔵の屍体には、明かに格闘をした形跡が残っていないではないか。――
だが、これだけではまだ解き足りない謎が大分沢山残されてある。
第一は犯人が一向遁げ出した様子がないことである。此の風呂場で感電騒ぎが起ったとき、向井湯の直ぐ向う側にある交番の警官が、バタバタと飛び出して来た浴客の女達のあられもない姿を認めて、彼女等を訊問したことに依って早くも事件を知って、時を移さず表口や裏口に手配をしたことが報告されている。感電事件に居合せた浴客の男達も、陽吉の手当している間に、警官に堅く禁足を命ぜられていた。後から飛び込んで来た近所の連中や通行人さえ、みんな留め置かれている。猫の子一匹だって表へ出たものがないとしたら、犯人は必ず此の向井湯の中に、依然として現在も居る筈に違いない。万一その犯人が由蔵の室の窓から外へ飛び出したとしても、見張りの警官に認められぬということはあり得ない。