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れいかん

霊感

豊島 与志雄

「中央公論」1952(昭和27)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,268 字 · 31 页

青空文庫

これも、同じ年配の未亡人です。

秋のある日、A女はなにか些細な用事で、村尾さんを訪れましたが、女同士のこととて、殊に未亡人同士のこととて、とりとめもないつまらない話が、それからそれへと枝葉を伸ばしてゆきました。そのうちにふと、村尾さんは言いました。

「ねえ、家相とか方位とかいうものが、ほんとにあるものでしょうか。あなたはどうお思いになりますの。」

村尾さんは江口さんとちがって、A女の信仰のことなど、一向に知らないのです。

A女は頬笑みました。

「そりゃあね、世間には、家相をやかましく言ったり、方位にこったりするひとが、あるにはありますが、あなたがそんなこと言いだしなさるのは、おかしいわね。」

「いえ、わたくしが信じてるというのじゃありませんよ。ただ、ちょっと気になることがあって、それからだんだん聞いてみると、どうもへんなんですのよ。」

「へんなこと、つまり理外の理というのでしょうか、世の中にはたくさんありますわ。」

「それがねえ……。」

村尾さんはちょっと考えこんで、頭の中を整理するらしく、そして話しました。

村尾さんの娘の嫁入先のことです。

相良家の広い屋敷が、戦時中の空襲のため灰燼に帰し、その一部に相良家は自邸を新築し、残りの土地を分譲しまして、そこに六軒のこじんまりした家が建ちました。