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ろはんせんせいのおもいで
露伴先生の思い出
和辻 哲郎
「文学」1947(昭和22)年10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,158 字 · 9 页
漢字をいきなり象形文字と考えるのは非常な間違いで、音を写した文字の方が多いこと、同じ音で偏だけ異なっているのは偏によって意味の違いを表示したもので、発音的には同一語にほかならないこと、従って一つの音を表示する基準的な文字があれば、象形的に全然つながりのない語に対しても、同音である限りその文字が襲用せられていること、などは、わたくしは先生から教わったのである。子供の時以来漢字や漢文を教わって来ていても、右のような単純明白なことを誰も教えてくれなかった。英語の字引きをひいて must(1)must(2)などとあるのをおもしろがっていた年ごろに、もし漢語を同じように写音文字にすれば、(1)(2)どころではなく(1)から(20)、否(30)…(50)と並べなくてはならないのだと知ったならば、よほど漢字に対する考え方が違っていたろうと思う。そこには漢語のような単音節語特有の困難な事情がある。日本語は単音節語ではないのであるから、右のような困難を背負い込む必要はなかったのである。
そういう類のことは日本語についてもいくつか聞いたと思うが、それらは大抵『音幻論』