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あおいランプ

青いランプ

小川 未明

「週刊朝日 17巻7号」1930(昭和5)年2月9日

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 6,233 字 · 13 页

青空文庫

しかし、夕焼けの美しかった夏には、とうとうお父さんは帰ってこられませんでした。

「今年は、お父さんは、お帰りなされんのだろうか?」と、娘がいうと、

「いいえ、お父さんは、約束なされたことは、けっしてお違いなされはしない。きっと、今夜あたり、帰っておいでなさるだろう。」といって、お母さんは、なにか虫が知らせるのか、かたく信じて、いつものごとく、青いランプに火をつけて、窓ぎわにすわって待っていられました。

その日は、なんとなく、家の人々の胸さわぎのする晩でした。

「今夜は帰っておいでなさる。」と、お母さんは信じて、暗い海の方を見ていられると、ふいに夜嵐の窓に吹きつけるように、幾羽ともなく、黒い海鳥が、青いランプの火を目がけて、どこからともなく飛んできて、窓につきあたったのであります。

お母さんは、神さまや、仏さまを、口のうちでお祈りをして、どうか、お父さんの身の上に変わりのないようにと願いました。そして、一夜まんじりとも眠りませんでした。

その翌晩も、どこからともなく、黒い鳥が青いランプの火を目がけて飛んできました。毎晩、青いランプに火をつけると、どこからともなくこの黒い鳥の群れが、押し寄せてきたのであります。