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あおバスのおんな

青バスの女

辰野 九紫

「新青年」1929(昭和4)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,918 字 · 22 页

青空文庫

と、大きく出た為めに、その挨拶に本社の監督が罷出でたのである。

「何分多勢のことで御座いますから、つい、私共の不行届も生じまして……平素はあんなではありませんので、極く温厚な、どちらかと申しますと、成績も上の部なのですが……」と頗る叮嚀で、却って当方が恐縮する位。――僕の影弁慶は意気地もなく、こんなことを言って終った。

「さあ、何ですか、主人が不在でわかりませんが、……そういえば兄は昨日帰ってから、そんなことを一寸言っているようでした。何にしても、お話はよくわかりましたから、帰り次第、その旨申伝えて置きましょう」

「ではどうぞ宜しく御伝え下さいませ。実は課長が伺うのですが……それからこれは昨日の切手代にお納め下さいますように、甚だ失礼では御座いますが……では御免下さい」

取り出されたものを見て、僕はドキリとした。――三越の切手か、なんて下卑た考え方をしてはいけない。即ち僕の昨日の出費三銭切手を、そのまま返しても悪かろうと思ってか、一銭五厘の忠告者にとって皮肉ではないか。ハガキ二枚。――まさか、青バス会社で、僕を私立警告発信所長と知ってではあるまいけれど――いささか気がさしたね。