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せいしゅんのぎゃくせつ
青春の逆説
織田 作之助
在线阅读織田 作之助《青春の逆説(せいしゅんのぎゃくせつ)》,假名注音日语阅读。JLPT N2,点词查义。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,593 字 · 325 页
貪るように啜っていると、社長が褌一つの裸で二階から降りて来て、
「こない日が射し込んで来よったら、毛利君かなわんやろ。もう直き簾をはりこむぜ。――どないや、帯封何枚ぐらい書けた?」
「六百枚位でしょう」
「そら早い。商売人なみや」
褒められたと思ったので、「帯封書きはえらいですね」と、微笑しながらお愛想にそう言うと、
「明日からほかの仕事してもらうぜ。月給はろて帯封書いて貰てたらうちの損や。商売人に頼んだら千枚なんぼで安う書いてくれよるネやから」
豹一はむっとしたが、同時に助かったという気持もした。その日一日中帯封を書いて、五時過ぎ、台所で手を洗って、「そんなら、帰らせていただきます」くたくたになって帰った。
翌朝眼を覚した時、今日も一日働くのかと思うと、怖いような気持がした。寝床の上にぼんやりと坐ったまま、なぜか紀代子や鎰屋のお駒の顔を想い泛べた。九時きっちりに出社すると、帳簿の整理をやらされた。振替郵便が来ると、入金簿へ金額、氏名、名目を記載し、もし購読料ならば購読者名簿へ購読年月日を記載し、広告掲載料ならば別の名簿へその旨書きいれる。単行本註文ならば、小包をつくり、猫間川の郵便局へ持参する。