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せいしゅんのぎゃくせつ
青春の逆説
織田 作之助
在线阅读織田 作之助《青春の逆説(せいしゅんのぎゃくせつ)》,假名注音日语阅读。JLPT N2,点词查义。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,593 字 · 325 页
あとの二人は、「どうぞこちらへ」というまで坐らない。
ざっとこんな風だったから、豹一のようになんの気取りもなしに、行きつけの飯屋へはいるような容子でぶらりとはいって来るのは珍らしいのである。実は元来気取り屋の豹一も、ここへはいって来る瞬間、さすがに気取るだけの心の張りを無くしていたのである。だから、随分人眼をひいた。おまけに彼は美貌だった。つまり彼女たちに言わせると、一風変っていたのである。
眉毛を細く描いた眼の細い女が、豹一のテーブルへ近づいて来て、
「あんた、ボタンがとれちゃってるわよ」と、豹一の上衣にさわった。彼女も、もし豹一が赧くなっているのでなかったら、こんな風に馴々しくしなかったのだ。普通、若くて美しい男は蒼い顔をして、じっと眼を据えているものである。つまりどこか不良くさいと、一応は敬遠されるものだ。豹一はおどろいて、上衣を見た。二つともボタンがとれていた。一つは戎橋の上でちぎって捨てた記憶はあるが、あとの一つはどこでとれたのかわからなかった。
「恋人につけて貰いなさいよ。みっともないわよ」私がつけてあげますよと言わんばかりだったが、そんな眼つきがわかるほどには、豹一はすれていなかった。