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せいしゅんろん

青春論

坂口 安吾

「文学界 第九巻第十一号、第十二号」1942(昭和17)年11月1日、12月1日発行

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,657 字 · 69 页

青空文庫

すると間もなく、その隣りの席があいた場合に、先刻、子供や婆さんに席を譲ってくれた人がそこに立っているにも拘らず、自分か、自分の連れをかけさせてしまう。よく見かける出来事であるが、先刻席を譲ってくれた人に腰かけて貰っている親父やおふくろを見たためしがないのである。

つまり子供だのお婆さんだのへの同情に便乗して、自分まで不当に利得を占めるやからで、こういう奴等が役人になると、役人根性を発揮し、権力に便乗して仕様のない結果になるのである。

僕は甚だ悪癖があって、電車の中へ婆さんなどがヨタヨタ乗込んでくると、席を譲らないといけないような気持になってしまうのである。けれども、ウッカリ席を譲ると、忽ち小役人根性の厭なところを見せつけられて不愉快になるし、そうかといって譲らないのも余り良い気持ではない。要するに、こういう小役人根性の奴等とは関係を持たないに限るから、電車がガラ空きでない限り、僕は腰かけないことにしている。少しくらいくたびれても、こういう厭な連中と関係を持たない方が幸福である。

去年の正月近い頃、渋谷で省線を降りて、バスに乗った。バスは大変な満員で、僕ですら喘ぐような始末であったが、僕の隣りに学習院の制服を着用した十歳ぐらいの小学生男子が立っていた。