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せいしゅんろん
青春論
「文学界 第九巻第十一号、第十二号」1942(昭和17)年11月1日、12月1日発行
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,657 字 · 69 页
近頃の名評だそうで、僕も笑ってしまったけれども、まったくお寺の本堂のような大きなガランドウに一枚のウスベリも見当らない。大切な一時間一時間をただ何となく迎え入れて送りだしている。実の乏しい毎日であり、一生である。土足のままヌッと這入りこまれて、そのままズッと出て行かれても文句の言いようもない。どこにも区切りがないのだ。ここにて下駄をぬぐべしと云うような制札がまったくどこにもないのである。
七十になっても、なお青春であるかも知れぬ。そのくせ老衰を嘆いて幽霊になるほどの実のある生活もしたことがない。そのような僕にとっては、青春というものが決して美しいものでもなく、又、特別なものでもない。然らば、青春とは何ぞや? 青春とは、ただ僕を生かす力、諸々の愚かな然し僕の生命の燃焼を常に多少ずつ支えてくれているもの、僕の生命を支えてくれるあらゆる事どもが全て僕の青春の対象であり、いわば僕の青春なのだ。
愚かと云えば常に愚かであり又愚かであった僕である故、僕の生き方にただ一つでも人並の信条があったとすれば、それは「後悔すべからず」ということであった。立派なことだから後悔しないと云うのではない。