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せいしゅんろん

青春論

坂口 安吾

「文学界 第九巻第十一号、第十二号」1942(昭和17)年11月1日、12月1日発行

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,657 字 · 69 页

青空文庫

愚かだけれども、後悔してみても、所詮立直ることの出来ない自分だから後悔すべからず、という、いわば祈りに似た愚か者の情熱にすぎない。牧野信一が魚籃坂上にいたころ、書斎に一枚の短冊が貼りつけてあって「我事に於て後悔せず」と書いてあった。菊池寛氏の筆であった。その後、きくところによれば、これは元来宮本武蔵の言葉だということであったが、このように堂々と宣言されてみると、宮本武蔵の後悔すべからず、と、僕の後悔すべからずでは大分違う。『葉隠れ論語』によると、どんな悪い事でもいったん自分がやらかしてしまった以上は、美名をつけて誤魔化してしまえ、と諭しているそうだけれども、僕はこれほど堂々と自我主義を押通す気持はない。もっと他人というものを考えずにはいられないし、自分の弱点に就て、常に思いを致し、嘆かずにもいられぬ。こういう『葉隠れ論語』流の達人をみると、僕はまっさきに喧嘩がしたくなるのである。

いわば、僕が「後悔しない」と云うのは悪業の結果が野たれ死をしても地獄へ落ちても後悔しない、とにかく俺の精一杯のことをやったのだから、という諦らめの意味に他ならぬ。宮本武蔵が毅然として「我事に於て」