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せいしゅん

青春

宮本 百合子

「婦人朝日」1940(昭和15)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,799 字 · 16 页

青空文庫

その小悪魔の嗅覚が、ごくの身近に、やはり目さめている性の異なった同類をかぎつけて、しかも親睦をむすぶすべもない条件を、そんな野蛮さで反撥したのであったろうと思う。

兄弟、姉妹の間にあるそういう微妙で苦しいものも、親たちにとっては一律に子であるということから余り気にかけないのも、自然であるのだろうか。私はよくその弟には殺されそうに思って号泣したくらいだったのに。

この弟は、大正九年の大暴風の日に発病してチフスから脳症になって命をおとした。この弟の生命が一刻一刻消えてゆく過程を私は息もつけないおどろきと畏れとで凝視した。その見はった眼の中で、彼に対するひごろの思いもうち忘れ、臨終記として「一つの芽生」という短篇をかいた。その中では克明に、一心に、生命の火かげのうつろいゆく姿を追っているのだけれど、私は二つの眼がそんなに乾いて大きく瞠られて、凝っとその臨終に息をつめていたということも、自分の無意識の心理にふれて今考えれば別の面からも思いひそめられる。あのとき泣かない自分の心の必然というものが、意識の下まで自分ではさぐり入れられていなかったと思う。若い生きる力は、そういう我知らぬエゴイズムに満ちるときもあるのだ。