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あおふくのおとこ
青服の男
甲賀 三郎
「現代」1939(昭和14)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,026 字 · 29 页
「えゝ、誰かゞね、茅ヶ崎の別荘で会いたいというので朝から出掛けたんですよ。所が夕方まで待ってもやって来ないというので、小浜さんはプン/\しながら帰って来ました」
「何時頃お帰りでしたか」
「さア、九時半か、十時頃でしたろう」
信造は昨日午後六時三分茅ヶ崎発の汽車で東京に向ってるから、真直ぐに帰れば八時過ぎにはアパートに着く筈である。途中で食事か何かの為に寄り道をしていたのだろう。望月刑事はそう思いながら、
「その会われるという方はどなたでしょうか」
「知りませんね」管理人はジロリと刑事を見て、「大方従兄弟だという人だろうと思いますが、私には分りませんよ」
「昨夕の十時頃帰って来て、それからずっと今朝までおられたのですね」
「えゝ、ずっとおられましたよ」
管理人はそういって、もう一度ジロリと刑事の顔を見た。刑事は今後の捜査上、身分を知られない方がいゝので、いゝ加減に切上げた。
「どうもお邪魔しました。なに、別に用はないんです。又来ます」
卓一という男
北田卓一の住居は蒲田区内のジメ/\した低地にあった。卓一も独り者なので、永辻栄吉という家に同居していた。