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あおふくのおとこ
青服の男
甲賀 三郎
「現代」1939(昭和14)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,026 字 · 29 页
奇怪な死人
別荘――といっても、二昔も以前に建てられて、近頃では余り人が住んだらしくない、古めかしい家の中から、一人の百姓女が毬のように飛出して来た。
「た、大へんだア、旦那さまがオッ死んでるだア」
之が夏なら街路にはもう人の往来もあろうし、こんな叫び声が聞えたら、あすこ、こゝの別荘から忽ち多勢の人が飛んで来ようが、今は季節外れの十二月で、殊にこの別荘地帯は茅ヶ崎でも早く開けた方で、古びた家が広々と庭を取って、ポツン/\と並んでいる上に、どれも之も揃って空家と来ているので、誰一人応ずる者はない。百姓女の叫び声は、徒らにシーンとした朝の空気に反響するばかりである。
「た、大へんだア、お、小浜の旦那がオッ死んでるだア」
百姓女が駈け出しながら、二度目にこう叫んだ時に、向うの垣根の端にひょっこり百姓男が現われた。
「お徳でねえか。ど、どうしただア」
「八さア」百姓女はホッとしたように息をついて、「お、小浜の旦那が死んでるだアよ」
「ハテね」
八と呼ばれた百姓男はキョトンとして、
「小浜の旦那はもう大分前にオッ死んだでねえか」
「違うだよ」お徳はもどかしそうに手を振って、