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あおふくのおとこ
青服の男
甲賀 三郎
「現代」1939(昭和14)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,026 字 · 29 页
之が無口で交際嫌いの信造の方が、お喋べりの交際の広い卓一に代るのですと、到底出来ませんが、逆に交際の殆どない信造の方に化けるのですから、比較的優しい訳です。
之から先はもう何でもない事で、卓一の洋服を着せた信造の屍体を積んで、永辻は茅ヶ崎の別荘へ行き、卓一は洋服を取替えて、信造に成り澄して、アパートへ帰りました。永辻は別荘が戸締りがしてあったので、仕方がなく戸締りを破りましたが、卓一の不断のやり方から反って卓一らしいと見られた訳です」
「なるほど、よく分ったが」警部は一寸眉をひそめながら、「一体何の為に卓一は信造になる必要があったのかね。そんなことをしなくっても、信造の財産はそっくり卓一のものになる訳じゃないかね」
「そこですよ。主任。えーと、相続税というものはどれ位かゝるんですか」
「信造の財産はどれ位あったかね」
「五六十万でしょう」
「直系の親族でないものゝ遺産相続だから、二割位かね。なるほど、それが惜しかったのか」
「未だ理由があります。卓一は俺が信造の財産を相続すれば、いくらでも金を出してやると方々に約束していましたので――」
「なるほど」警部は笑って、「他人の金だった時分には、いくらでも気前よく約束出来たが、自分のものになって見ると、惜しいか。