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あおふくのおとこ

青服の男

甲賀 三郎

「現代」1939(昭和14)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,026 字 · 29 页

青空文庫

それからハア、もう二年にもなりますだが、来たのは昨日さ初めてゞごぜえますだ」

「初めて別荘に来て、すぐ死ぬとは気の毒な人だねえ」

「全くでごぜえますだ」

お徳がそういって相槌を打った時に、お徳の亭主の竹谷義作が紙片のようなものを手にして、頭をふり/\やって来た。何とも訳が分らぬという顔つきだった。彼はお徳を見ると叫んだ。

「オイ、お徳よ。俺ア、丸で狐に撮まれたようだよ」

そういって手にした紙片を出したが、それは電報だった。

「どうしたゞかよ」

お徳は何か恐いものでも取るように、オズ/\と電報を受取ったが、すぐ大きな声を出した。

「ひゃア、こ、これは、あんちゅう事だ」

寺本医師が電報を覗き込むと、

ナニノマチガイカ オバマシンゾウハイキテイル ヨクシラベコウ

「うむ」寺本医師は唸った。「じゃ、この死んでいる男は小浜信造じゃないのだな。之アいよいよ警察の仕事になって来たわい」

鳶色の洋服

所轄警察署から小浜信造宛に、

スグオイデコウ

という電報が打たれた。

午後二時過ぎ小浜信造はやって来た。色の蒼白い三十そこ/\の華奢な青年だった。

一旦警察署に出頭した信造は、司法主任以下に連れられて、現場の別荘に着いたが、お徳は信造を見ると、卒倒するほど驚きながら叫んだ。