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あおだけ
青竹
山本 周五郎
「ますらお」大陸講談社、1942(昭和17)年9月
N1 · 挑战 · 新字新假名 · 14,622 字 · 29 页
直政はそれをずっと見まわしたが、ひとりだけ、そのなかに黙ってしぶい顔をしている者をみつけた。竹岡兵庫というものだった、つねにひと理屈こねずにいない一徹な性分で、老臣のなかではきけ者の一人である、「兵庫はどうした、なにか異存があるか」「いかにも異存がござります」鬢には白いものをまじえているが、年は五十になったばかりで、日にやけた逞しい相貌には壮者をしのぐ精気が溢れている、かれは一座をねめまわしながら、「御恩典の儀はまことにかたじけのうござります」と無遠慮に云いだした、「また阿多ぶんごを討った手柄もあっぱれと存じます、けれども関ヶ原の合戦は一年以前のこと、賞罰もすでにそのとき執りおこなわれております、事実に相違はなくとも、いったんおこなわれた賞罰を今になって改めるとはいかがでござりましょうか」ぐいと兵庫は直政を見あげて云った、「かような事は前例となるものでござります、合戦が終って年数が経ちましてから、あの大将はおれが討った、あの功名はおれのものだと、てんでん勝ちな論争が出ました場合いかがあそばしますか、これはさような時の悪い前例となりは致しませぬか、……余人は知らずこの兵庫は、いまさらの御恩賞はあくまで御無用と存じます」