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あおだけ
青竹
山本 周五郎
「ますらお」大陸講談社、1942(昭和17)年9月
N1 · 挑战 · 新字新假名 · 14,622 字 · 29 页
「おことわり申します」打ちかえすような返辞だった、あまりにすばやく、しかもきっぱりとした返答なので兵庫はちょっと息をのんだ。
「ことわる、ほかに約束でもあるのか」「さようなものはございません」これもはっきりしていた、兵庫はじっとその顔をみつめながら、「ではもしや、せんじつの評議でわしが恩賞とりやめを申し張ったのが気にいらぬのではないか」「さような男にみえますか」笑いもせずに源七郎は云った、「なるほど不快でなかったとは申しません、しかし不快に思いましたのはこなた様に対してではなく、五百石ご加増との仰せを聞いて、ふとよろこびを感じたおのれのあさはかさでございました、正直に申しますがわたくしは恥ずかしさに身が竦んだくらいでございます」
「ではなにが気にいらぬのだ、わしも底を割って云うがあの娘だけはかくべつ可愛い、五人ある子たちのなかであれひとりはかくべつなのだ、たのむ、そのもとをみこんでたのむのだ、どうか嫁にもらって呉れ」
「せっかくのお志ではございますけれども、これだけはお受けをいたし兼ねます」
「なぜいかん、むすめが気にいらんのか」
「そうではございません」