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あおだけ
青竹
山本 周五郎
「ますらお」大陸講談社、1942(昭和17)年9月
N1 · 挑战 · 新字新假名 · 14,622 字 · 29 页
源七郎のさしものが変ったのを、そのときはじめて人々はみつけた。四半の布に墨絵で蕪をかいたものが、その蕪の下にあたらしく一連の数珠を描き加えてある、蕪だけでもかなり変った差物だったのに、数珠が加わったのでひどく眼についた、「差物が変ったな、どうしたんだ」「ひどく仏くさいものを描きこんだではないか、なにか発心でもしたのか」みんなしきりに不審をうったが、源七郎は苦笑するだけでなにも語らなかった。
合戦のありさまを精しくするいとまはないが、このたびは大阪軍もその運命を賭していたので、ずいしょに激しい戦闘が展開した。そして五月七日午後のことである、……天王寺口の側面攻撃を命ぜられた井伊軍は、藤堂軍と共に果敢な進撃を開始した。しかしこの攻撃はかねて敵の期して待つところだったとみえ、出ばなを叩いて火の出るような反撃に遭った、まことに烈火のような反撃だった、井伊軍は旗奉行はらみいし春時、広瀬まさふさを討たれ、挽回しがたしとみてついに退却令を出し、秀忠の陣へといったん兵をひかせた。けれどもそのなかにあって余吾源七郎は動かなかった、かれは右翼の攻めくちにしがみついていた、二度まで退却をうながされたが、その部下と共に必死と攻め口を確保していた。