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あおだけ

青竹

山本 周五郎

「ますらお」大陸講談社、1942(昭和17)年9月

N1 · 挑战 · 新字新假名 · 14,622 字 · 29 页

青空文庫

源七郎は平伏したまましばらくなにも云わなかった。しかしそれは思い迷っていたのではなく、よく考えろという主君の言葉をすなおに受けただけであった。

「恐れながら」とかれはやがてはっきりと答えた、「退陣せよとの軍令はたしかに承りました、決して聞き誤りはございませんでした」

「ではいかなるわけで退陣しなかったのだ」

「まったく源七郎の不所存でございます、なにとぞ掟どおりの御処分をお願い申上げます」

「ただ不所存ではわからぬ、重科を承知で軍令にそむいたには仔細がある筈だ、それを申せ、包み隠さず申してみい」

「恐れながら申上ぐべきことはございません、なにとぞ掟どおりお申付けのほどを」

どう訊ねても答えはおなじだった。原因がはっきりしているうえに当人がなんの申開きもしないので罪を軽減するたよりがない、直孝もこれでは助けようがなかった、それでついに裁決をくだした。「軍令にそむき、二百余の兵を喪った罪によって、切腹をも申付くべきところ、祥寿院さま(直政)以来の功にめんじ、食禄めしあげその身は追放に処す」源七郎は平伏して拝受した。老臣たちのあいだから憐愍の沙汰を願いでるかと思ったが、みんな一言もなく直孝の裁きに服した。