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あおだけ
青竹
山本 周五郎
「ますらお」大陸講談社、1942(昭和17)年9月
N1 · 挑战 · 新字新假名 · 14,622 字 · 29 页
天王寺口の突破は延び、大阪城の陥落はさらに時日を要したに相違ございません、およそ戦場において」とかれは声をはげまして叫んだ、「勝敗の決するところはまことに機微、ここぞと思う一刹那にはなにを捨てても戦いぬく覚悟がたいせつでござります、源七郎はその一刹那を戦いぬきました、軍令にそむく罪も承知、隊士もろともおのれの身命を抛って戦いぬきました、かれの罪は罪、しかしこの一点をみはぐっては戦場の魂はぬけがらとなります、列座のかたがたにもたずねたい、余吾源七郎の戦いぶりをどこまでも重科に当るとお思いなさるか」
まるで叱りつけるような叫びである、しかしそれを聞く直孝の眼には涙がうかんでいた、眉はあかるく、唇もとには微笑があった。老臣たちが感動したのは云うまでもない、ただひとりだけ、当の源七郎だけは平然と色も変えずに控えていた。「兵庫の意見をどう思うぞ」直孝はやがて一座を見まわした。「道理もっともと存じまする」「わたくしも道理至極と存じます」つぎつぎに老臣たちは賛意を表した、直孝はこころよさそうに頷いて、
「では予の裁決はあらためる、軍令にそむいた罪は咎めよ、しかし手柄は手柄としてよくとり糺すがよい、評議のしだいはおって聴くぞ」