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あおおにのふんどしをあらうおんな

青鬼の褌を洗う女

坂口 安吾

「愛と美」朝日新聞社、1947(昭和22)年10月5日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 40,368 字 · 79 页

青空文庫

しかし、君は違う。私のような年配になると、人間世界を若さの世界、年寄の世界、二つにハッキリ区別する年齢的な思想が生れる。私自身若かったころは殆どもう若々しいところがなくて孤独癖、ときには厭人癖、まことにひねこびた生き方をしており、私に限らずなべて若者の世界も心中概ね暗澹たるもののように察しているが、私はしかしある年齢の本能によって限りなく若さをなつかしむ。慈しむ。若さは幸福でなければならないと思う。若者は死んではならぬ。ただ若さというものに対してすでにそのような本能をもつ私が、私の最愛の若い娘に対して、どのような祈りをもっているか、その人の幸福のために私自身の幸福をきり放して考えることが微塵も不自然でないか……」

久須美は私のために妻も娘も息子もすてたようなものだった。なぜなら彼は、もはや自宅ではなしに私たちの海岸の旅館へ泊りそこから東京へ通っているのだから。人々はそのような私たちをどんな風にいうだろう? 私が久須美をだましたというだろうか。恋に盲いた年寄のあさましい執念狂気を思い描くことだろう。

私はしかしそんなことはなんとも思っていない。息子や娘にとって、親なんか、なんでもないではないか。