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あごじゅうろうとりものちょう

顎十郎捕物帳

久生 十蘭

17 初春狸合戦

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,819 字 · 26 页

青空文庫

ころがっているわけにもゆかない。

なんとか食の途をあけようと思っている矢さき、ふと居酒屋で知りあった雷土々呂進。どうせ世をしのぶ仮りの名だろうが、このご仁も喰いつめてテッパライ。盃をやりとりしているうちにひどく気があって、

「どうでしょう、ふたりで辻駕籠でもやってみたら、なんとか喰いつなげるかもわかりません」

「面白い、やりましょう」

で、始めたやつ。

空ッ脛だけが元手の朦朧駕籠屋。

親方もなし、駕籠宿もなし、したがって、繩張りなんてえものもない。

縁日、縁日をたよりに、きょうは白金の辻、明日は柳原堤と、風にまかせて流して歩き、このへんと思う辻々で客待ちをする。気楽は気楽だが、やっぱり法にかなってないとみえて、あまりパッとしない。

辻のせいばかりじゃない、月ぎめ銀二朱で借りた見るかげもない古四ツ手。

垂れはちぎれ、凭竹は乾破れ、底が抜けかかって、敷蒲団から古綿がはみだしている。とんと、闇討にあった吉原駕籠の体たらく。

おまけに、駕籠舁がいけない。

アコ長のほうは、ごぞんじの通り、大一番、長面の馬が長成の冬瓜をくわえたような、眼の下一尺二寸もあろうという不思議な面相。