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ふうりゅう

風流

坂口 安吾

「新潮 第四八巻第十三号」1951(昭和26)年12月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,419 字 · 19 页

青空文庫

焼けてから六年目のバラック都市よりも焼け残った都市の庶民住宅がもっと暗く貧寒だという発見は、それほど異様きわまる狼狽を与えるものであった。

*

私は日本が戦争に負けるまで、自分がこれほど日本を愛しているということを知らなかった。

国やぶれて山河あり、とはまさしく私の感慨でもあったが、八月十五日に敗戦を確認したとき、それが四年前の十二月八日の日から確信していた当然の帰結であったにも拘らず、

「日本が本当によい国になるのは、これからだ」

という溢れたつ希望と共に、祖国によせる思いもよらなかった愛情がこみあげてきて、こまった。もとよりそのような愛情がこみあげてきたところで、私にどうする当てがあるわけでもない。

ただ、私がそのころ信じることができたのは、当分の年月、餓鬼と絶望と無法と混乱の暗黒時代がうちつづくにしても、この惨たる焼土から「自然に」正しい芽が生れない筈はないということだった。

私はたしかに「自然に」と考えたのである。それほど人間の魂を奥深くから揺りうごかして、おのずから正しい位置へ導くだけの力をそなえた千古に稀れな惨禍だと思ったのである。