轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

かぜたちぬ

風立ちぬ

堀 辰雄

序曲、風立ちぬ「改造」1936(昭和11)年12月号、冬「文藝春秋」1937(昭和12)年1月号、春「新女苑」1937(昭和12)年4月号、死のかげの谷「新潮」1938(昭和13)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 54,998 字 · 108 页

青空文庫

……」そんなことまで心の裡で考えながら、それには少しも自分では気がつかずに、私はかえって何んでもないように見える些細な印象の方にすっかり気をとられていたのだ。……

そんな庭面はまだほの明るかったが、気がついて見ると、部屋のなかはもうすっかり薄暗くなっていた。

「明りをつけようか?」私は急に気をとりなおしながら言った。

「まだつけないでおいて頂戴……」そう答えた彼女の声は前よりも嗄れていた。

しばらく私達は言葉もなくていた。

「私、すこし息ぐるしいの、草のにおいが強くて……」

「じゃ、ここも締めて置こうね」

私は、殆ど悲しげな調子でそう応じながら、扉の握りに手をかけて、それを引きかけた。

「あなた……」彼女の声は今度は殆ど中性的なくらいに聞えた。「いま、泣いていらしったんでしょう?」

私はびっくりした様子で、急に彼女の方をふり向いた。

「泣いてなんかいるものか。……僕を見て御覧」

彼女は寝台の中から私の方へその顔を向けようともしなかった。もう薄暗くってそれとは定かに認めがたい位だが、彼女は何かをじっと見つめているらしい。しかし私がそれを気づかわしそうに自分の目で追って見ると、ただ空を見つめているきりだった。