轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

かぜたちぬ

風立ちぬ

堀 辰雄

序曲、風立ちぬ「改造」1936(昭和11)年12月号、冬「文藝春秋」1937(昭和12)年1月号、春「新女苑」1937(昭和12)年4月号、死のかげの谷「新潮」1938(昭和13)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 54,998 字 · 108 页

青空文庫

彼女はベッドに寝たままそれを受取ると、急に少女らしく目を赫かせながら、それを読み出した。

「あら、お父様がいらっしゃるんですって」

旅行中の父は、その帰途を利用して近いうちにサナトリウムへ立ち寄るということを書いて寄こしたのだった。

それは或る十月のよく晴れた、しかし風のすこし強い日だった。近頃、寝たきりだったので食慾が衰え、やや痩せの目立つようになった節子は、その日からつとめて食事をし、ときどきベッドの上に起きて居たり、腰かけたりしだした。彼女はまたときどき思い出し笑いのようなものを顔の上に漂わせた。私はそれに彼女がいつも父の前でのみ浮べる少女らしい微笑の下描きのようなものを認めた。私はそういう彼女のするがままにさせていた。

それから数日立った或る午後、彼女の父はやって来た。

彼はいくぶん前よりか顔にも老を見せていたが、それよりももっと目立つほど背中を屈めるようにしていた。それが何んとはなしに病院の空気を彼が恐れでもしているような様子に見せた。そうして病室へはいるなり、彼はいつも私の坐りつけている病人の枕元に腰を下ろした。ここ数日、すこし身体を動かし過ぎたせいか、昨日の夕方いくらか熱を出し、医者の云いつけで、彼女はその期待も空しく、朝からずっと安静を命じられていた。