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きがちたいをあるく
飢餓地帯を歩く
下村 千秋
――東北農村惨状報告書――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,478 字 · 31 页
小鳥共は、山の荒れることを知ってどっかへ飛んで行ってしまうものと見えますだ。この村の小鳥共もそれと同じでがす……」
私はこれ以上を訊くことは出来なくなってしまった。
この、娘を売る哀話は、青森県の津軽半島へ入ってから実際に聞きもし見もし、私は、その売られた娘とも会って話したのであるが、これは後で述べることにして、私は先ず、青森県下へ踏み込んで、第一番に見聞した三本木町、七戸町附近、及び浦野館村一帯の飢餓地の惨状を述べなければならない。
ここは、上地郡内で、例の太平洋横断機の飛び出した淋代海岸もその一部であるが、私が踏み入ったのは、この海岸より八甲田山の方へ六七里入った平野の村であった。岩手県には僅か三四寸の雪も、この地方へ来ると、七八寸から一尺ほどに積っていて、遙か北の空を区切っている八甲田山は、麓まで真白に輝いていた。
三本木町までは軽便があったが、それから七戸町、浦野館村へ行くには乗合自動車しかなかった。しかし私は村々を一つ一つ見て歩くために、一人の百姓青年を道案内に頼み、ズボンには巻ゲートルをつけて、歩ける所まで歩き、歩けなくなったら、どっかの百姓家へ泊めて貰う覚悟で、ぽつぽつと歩き出した。