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もちのタタリ
餅のタタリ
「講談倶楽部 第六巻第一号」1954(昭和29)年1月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,869 字 · 18 页
この知らせをきいて、長男や女房が野良から駈けつけてみると、キコリたちがエイエイと大木に切りこんでおり、門前には助六が六尺棒を握りしめて、女房子供もよせつけない。
「杉の木が倒れるまでは誰も門の中へ入れないぞ。あッちへ行っておれ」
「だって杉の木が倒れれば塀も倒れてしまうじゃないか。塀につづいて、土蔵や物置も危いかも知れない」
「それぐらいのことは、さしたることじゃない。雷が落ちて倒れた時のことを思えば、なんでもないことだ。落雷だったら、母屋の方へ倒れるかも知れないのだ。二度とインネンをつけると、この棒が物を云うぞ」
見ると助六の顔は妙にゆがんで目がつりあがっている。その目にはドロンドロンと変な焔が吹きあげていて、まったくいつ六尺棒が襲いかかるかはかりがたい殺気がこもっている。まるで発狂したような物凄さだ。村には助六を説得できるような人物もいないことだし、女房も長男も仕方なく、野良へ引き返した。見ているよりも、野良で働いている方が気が楽だったからである。そして杉の木は切り倒されてしまった。杉の木の根の方が三尺ほどと、頭の方が一間ほど切り落されて、あとの部分は買った人が数日がかりで運び去った。