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くびきりもんどう

首切り問答

佐々木 邦

「日の出」新潮社、1935(昭和10)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,332 字 · 17 页

青空文庫

僕は発表前に野口君に報告した。野口君はカン/\に憤って、激越な手紙を寄越した。元来貴様の態度が怪しいと思っていた。道徳家ぶって、仇討ちの妨害をするために大友を管下へ呼んだのだろう。友達甲斐のない奴だというのだった。誤解のないように説明してやったら、今度は頼んで来た。それじゃ仕方がないから大切に保護して置いてくれ。仇討ちは曽我の場合には十八年かゝっている。十八年の天津風。今に知事になって切ってやるというのだった。

僕は職務上大友氏と一切交渉がない。しかし学士会の会合で度々顔を合せた。それから長男が入学したから、父兄という関係が出来た。矢張り名校長だった。第二中学校はもうコトリとも言わなかった。そのまゝ三年過ぎた。野口君は東京からの帰りを二度寄った。二度目の時だった。

「何うだい? 大友は」

「よくやっている。名校長の誉が高い。君は知事になって来ても、迚も切れないよ」

「僕は理窟で切るんじゃない。職務で切るんだ。要するに切りさえすれば宜いんだ」

「そんな無茶な話があるか」

「屹度切って見せる」

「大友氏はもうこゝを動くようなことはないよ」

「それだからこゝで切るんだ」