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くびきりもんどう

首切り問答

佐々木 邦

「日の出」新潮社、1935(昭和10)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,332 字 · 17 页

青空文庫

仇討ちの決心

仇討ちの決心

この事件に関する野口君と僕の交渉は僕が九州で某県庁の属官を勤めていた頃から始まる。野口君は裏日本の某中学校教諭を拝命して、三年ばかりたっていた。二人は高等学校時代からの同窓で極く親しかった。それだから野口君が九州まで訪ねて来ても然う驚く筈はないのだが、突然だったし、教員の自由の利く休暇季節でなかったから、僕は野口君の顔を見た時、悪い予感に襲われた。

「何うしたんだい? 今頃」

「東京へ帰る途中だ」

「方角が違うじゃないか?」

「途中で思いついてやって来たんだ」

「今頃? 休暇でもないのに、何うしたんだい? 一体」

「君、実はこれだ。突然」

野口君は首を叩いて見せて、

「口惜しくて仕方がない」

「驚いたね、これは」

「君に相談に来たんだ」

「僕の力で出来ることなら何でもする。幸い県庁のお役人だ。この県下で宜ければ心掛けて置く」

「いや、僕はもう教育界は見限った」

「一体どうして首になったんだい?」

「自分でも次第が分らない。僕を採用した校長が転任して、教頭の野郎が昇格したんだ。すると単に学校の都合だから余所へ行ってくれという相談さ」

「君のことだから、普段教頭を教頭と思っていなかったんだろう」