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しゅせきとばっせき
首席と末席
佐々木 邦
「雄弁」大日本雄辯會講談社、1927(昭和2)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,378 字 · 15 页
しかし教室へ出ると早速ひやりとした」
「何うして?」
「朝の中は一年生と二年生で無事だったが、昼前の時間は五年生さ」
「五年生なんか教えるのかい?」
「初任は三年生までだが、手不足だものだから二時間持たせられたのさ。喋っている中に午砲が鳴ったんだよ。僕はそのまゝ授業をやめれば宜かったのに、『田舎の午砲は大きいね』と冗談を言った。すると一人の生徒が『先生、午砲は英語で何といいますか?』と訊いた。一寸面喰ったね」
「何というんだい? 午砲は」
「知らなかったんだよ。しかしそこは先生だ。『毎日聞いている午砲を知らないんですか? 午砲です。正午の鉄砲です。ヌーン・ガンです』と直訳してやった。『出来る/\』という声がした。知っていることを訊いて試めすんだね。教員室へ帰って辞書を引いて見たら、矢っ張りヌーン・ガンさ。安心した」
「うまくやったね」
「教科書以外の質問は困る。何が出るかも知れないから、この頃は教科書以外のことを訊いて時間を潰さないようにと予め注意して置く」
「狡いんだね」
と私達は感心すると同時に手心を学ぶ。
「持てるぜ。実に」
と菊地君は元来風采の好い男だったが、フロックコートにカイゼル髭厳めしい紳士になって立ち寄った。