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しゅせきとばっせき

首席と末席

佐々木 邦

「雄弁」大日本雄辯會講談社、1927(昭和2)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,378 字 · 15 页

青空文庫

当時は重々しい容姿が流行ったのである。この教諭はもう心得でなかった。前々年に卒業して去年検定を取ったから一躍三十五円に昇級していた。

「君は特別だろう? 成績が好いんだもの」

と私達は早速油をかけた。

「そんなこともないが、前任者がひどかったからね。教頭から話を聞いて驚いた。This pencil is for my brother とあるのを『この鉛筆は私の弟の方を向いている』と訳したそうだ」

「豪い英学者だね」

「それだから一年生二年生しか教えていなかった。鉛筆が弟の方を向いていると訳しているところへ教頭が視学官を連れて参観に行ったから耐まらない。困ったそうだよ。教頭は理学士だけれど、それぐらいの英語は分る。後から早速、『君、気の毒だが、やめてくれ給え』とやったんだね。すると未練な男で、月給を少しへらしても宜いから置いてくれと言って泣きついたそうだ」

「それから何うしたね?」

「しかし生徒の為めだから、そんなことを取り上げちゃいられない。首さ。その後へ僕が行ったのさ」

「英語の教師は大勢いるかい?」

「高師が三人、検定が一人、それに僕だ」

「出来るかね、皆?」