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えきふにっき

駅夫日記

白柳 秀湖

「新小説」1907(明治40)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,989 字 · 69 页

青空文庫

何しろ柔和しい足立さんも今日はよほど激していたようでした」

私は小林の談話を聴いて、言いしれぬ口惜しさを覚えた。自分の職務というよりも、私があの紳士を制止したのは紳士の生命をあやぶんでのことではないか、私は弱き者の理由がかくして無下に蹂み躙られて行くのを思うて思わず小さい拳を握った。

「柔和しい足立さんの言うことが私にはもう、まだるっこくなって来たもんですから、手厳しく談じつけてやろうとすると足立さんが待てというて制する。足立さんはそれから静かに理を分けてまるで三歳児に言い聞かすように談すと野郎もさすがに理に落ちたのか、私の権幕に怖じたのか、駅夫の負傷は気の毒だから療治代はいくらでも出すとぬかすじゃあありませんか」

私は思わず涙の頬に流れるのを禁じ得なかった、療治代は出してやる、私はつくづく人の心の悲しさを知った。さすがに人のいい細君も「マア何という人でしょう!」というてホッと吐息を漏らした。

「ところが驚くじゃあありませんか、私と足立さんとが、決して金を請求するためにこんなことを言うたのじゃあない、療治代を貰いたいために話したのじゃあないと言うと、野郎怪訝な顔をしているのです。