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たかいきとこどものはなし

高い木と子供の話

小川 未明

「キング」1929(昭和4)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,979 字 · 10 页

青空文庫

一

一

善吉は、ほかの子供のように、学校から家に帰っても、すぐにかばんをほうり出して、外へいって、友だちと自由に飛びまわって遊ぶことはできませんでした。仕事のてつだいをさせられるか、弟を脊中におぶって、守りをさせられたからであります。彼と同じ年ごろの子供たちが、土手へはい上がったり、茶の木の蔭にかくれたり、みぞをおもしろそうに飛び越すのなどを、そばでぼんやりとながめながら、

「おれも、あんなようにして遊びたいものだな。」と、心のうちで思っていました。

彼は、どうかして、学校から帰ったら、うまく、逃げ出したいものだと考えていました。しかし、家のものに気づかれずに、外へいってみんなといっしょに遊ぶことができたにしても、それは、ほんのすこしの間であって、すぐに、家へ呼びもどされたのです。

「そう、親のいうことを聞かぬようでは、どこかへやってしまうぞ。」

「だれが、ゆくものか。」

「いいや、やってしまう。おまえみたいな、いうことをきかぬ子は、ほんとうは、うちの子ではないのだ。」

「そんなら、どこの子だい。」

「どこの子だか知らないが、小さなときに、かわいそうだと思って拾ってきて育てたのだ。