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たかいきとこどものはなし
高い木と子供の話
小川 未明
「キング」1929(昭和4)年6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,979 字 · 10 页
「善ちゃん、ほんとうかい。ほんとうに、海が見えるかい。」
「うそをいうものか。あっちには、町が見える……。いい景色だなあ。」と、善吉は、木の頂に登っていいました。
下の子供たちは、うらやましがって、上を仰いで口を開けています。中途まで、登ったものも、いつか思いあきらめて、降りてしまいました。
「善ちゃん、おっこちたら、死んでしまうよ。」と、自分はできなかったので、負け惜しみに、善吉が早く降りるように、そんなことをいっていました。
すると、善吉は、だれもできないことを、ひとりしているので、ますます得意になって、
「海が、よく見えるな。あ、汽車が通っている。ほら森に隠れた。あ、見えた。あすこが停車場か。」と、いちいちいって、下のものをうらやましがらしていました。
「早く、善ちゃん降りておいで、鬼ごっこをしようや。」
こう下から呼ぶと、善吉は、ゆうゆうと上から降りてきました。そして、自分ひとりだけしか知らない、高い木の上で見た景色をいろいろに物語ったのです。
「善や、善吉や。」
あちらで、母親が呼ぶ声がしました。すると、善吉の、いままで輝いていた顔が、たちまち曇りました。