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おに
鬼
江戸川 乱歩
「キング」大日本雄弁会講談社、1931(昭和6)年11月、1932(昭和7)年1月~2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 30,138 字 · 60 页
男の呼出状でございます」
母親はそんな風に云って、切手の貼ってない一通の封書をさしだした。
「使が持って来たのだね。誰がこの手紙を娘さんに渡したのか、傭人達を調べて見ましたか」
予審判事の国枝氏が、物やさしく尋ねた。
「ハイ、それはもう充分調べたのでございますが、妙なことに、誰も知らないと申すのでございます。ひょっとしたら、娘が門の所に出ていた時、直接手渡して行ったのかも知れませんでございます」
「フム、そんなことだろうね。ところで、あなたは、この手紙の主に心当りでもありますか」
「イイエ、親の口から申すのも何でございますが、あれに限って、そんなみだらなことは、これっぱかりもございません。この手紙の男も、決して前々から知っていたのではなく、上手な呼出文句に、ついのせられたのではないかと存じます」
で、その呼出状の文句というのは、左の様な至極簡単なものであった。
今夜七時、お宮の石燈籠のそばで待っています。きっと来て下さい。誰にも云ってはいけません。非常に非常に大切な用件です。
Kより
「この筆蹟に見覚はありませんか」
「一向心当りがございません」
「鶴子さんは、大宅村長の息子の幸吉君と許婚になっていた相ですね」