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まぞう

魔像

林 不忘

新版大岡政談

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 131,494 字 · 260 页

青空文庫

諸君はどう思われるかしらんが、これだけ屈強の士、しかも、多くは将軍家御警衛の任に当る天下の旗本である。のみならず、召し出されてお城の要役にある者が、斯く一致団結して当りながら、元同僚とは申せ、今は痩浪人である。その痩浪人一匹持てあまして……実に何たる――! イヤ、考えてもムシャクシャ致すワ」

「何の。その悲憤は貴殿のみではない。御用の者に駆り立てられておる野犬を、思うさま咬み廻るに任せて、今日まで指一本触れることが出来ぬとは、イヤハヤ、心外のいたりでござる」

「上に聞えて面白くないばかりか、庶民に対しても御番部屋の名折れ、延いては千代田のお城の威信にも関することだ」

「そうだ。だが、上司へはもう聞えておる。老中、若年寄、大目附など、寄りより鳩首凝議しておるとのことじゃ」

「ふふむ。何を協議しておるのかな」

「それはわからぬ。天機洩らすべからずだそうだ」

「ふふう、あの老人連中と来た日には、何と言えば集まって愚図愚図いうのが好きなのじゃ。それだけのことじゃ」

「そうとも、第一、何も相談などすることはないではないか。一日も早く喬之助めに繩打つように、八丁堀はじめ町方一統を激励鞭撻すればよいだけじゃ」