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ろじんさん
魯迅さん
内山 完造
「図書」岩波書店、1955(昭和30)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,269 字 · 17 页
ところがその日はのんでみようというのでのませたが、ちっともきかない。そうしていると苦しいだろう、寐たらどうかといってベッドへ寐かせる、そこへ須藤さんがやって来た。ドアをあけるなり、じっとそこから見ていて、もう駄目だとみたらしい。中へ入って来て、脈をとって見て悪い、という、松井博士をよんでくれというのですぐよびにやったんですが、松井博士は日曜なのでゴルフにいっておらん、ちょうどそこへ石井政吉というドクターが来たので魯迅さんが悪いといったらすぐに見に行ってくれた。そして酸素吸入をしなければいけないというので、それを取りよせた。そうして酸素吸入をかけながら、十九日の夜明けまでもって、亡くなったのです。
遺言はなかった。しかし、前に「死」というのを書いている。その中にちゃんと遺言を書いているんです。わたしの知っているどんな人からも香奠をもらってはいけない。但し老朋友はその限りでない(仲のいい友達はかまわない、というのです)。供養もしてはいけない。わたしのことは忘れてしまえ、食うことに働け、子供はなまなかの文学者にするな。まだあったかな、四つ五つあったのですけれどもそれが遺言です。