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なるとひちょう

鳴門秘帖

吉川 英治

03 木曾の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 56,957 字 · 114 页

青空文庫

「自暴自棄になっているのだ」

「この分では、ただの山牢では不安心ゆえ、改めて、前神の森の石子牢へぶちこんでくれましょう」

「それほど手数のかかる奴なら、なぜひと思いに、首を打ってしまわぬじゃろう」

「隠密は斬るな、終身山牢へ入れて鳴門の向うへは返すな、間者を斬ると徳島城へ祟りをする――というのは、義伝様以来、破れぬお家の掟でござります」

「そうそう、大阪表におった頃、そういう話を阿波殿の口からも聞いたことがある。そのために、十一年余りも、この上の洞窟に封じ込まれている甲賀世阿弥、あれはまだ存生でいるのか」

「生きているというのも名ばかり、まるで、うつせみかまゆを脱けた蛾のように老いさらぼうておりまする」

「道理で、この柵の中から上は陰森としているな」と、その世阿弥が、流れをへだてた向うの柵ぎわに、ジッと身をかがめているとは知らずに、三位卿、なに気なくふりかえった。

その眼を避けようとして、世阿弥はあわてて身を引っ込めたが、おおいかぶさっていた山笹やつつじの葉がガサガサと動いたので、

「や、何者か?」

と三位卿、身を屈して流れのうちから向うを睨んだ。

啓之助もズーと柵ぎわを見渡したが、格別、異状がないので、気にかけずに、